TOKYO! 

Michel Gondry-“Interior Design”
Leos Carax-“Merde”
Bong Joon Ho-”Shaking Tokyo”
以上三つのお話からなる東京を題材にした映画 TOKYO!



STORY1 INTERIOR DESIGN(インテリアデザイン)

ヒロコは雑誌を切り抜くのが趣味な不器用な女の子、といっても18とかではなく25~27才位のもういい年の女性だと思う。彼女の彼氏はアキラという駆け出しのB級映画監督で、それで彼の映画上映のためになんとなくいつも一緒にきてしまったという人生を送っていた。そんなある日東京での上映機会があったので2人で上京しまず高校時代の同級生のアパートに泊めてもらうことに。すぐにアパートを探して、仕事も見つけて、車の駐車だって問題になるなんて思ってもいなかった。自分なりにはがんばってる、全力でやるべきことをしているのにその価値観や努力を恋人の明や友達、周りの人に認めてもらえない。志が無い、有名になれなければ何をやっていても意味がないなどなど、芸術肌の彼氏はアートのことで頭がいっぱい。現実味が無く夢見がちでちっとも真剣に話なんか出来ない。東京に来てから何をするにもお金が掛かり、知り合いのいない東京でやってくのはきつかった。狭い住宅事情で生まれる上辺だけの人間関係。持ち主のいない車は次々にスクラップになり、ぺしゃんこにされ消えていく。そんな心の休息の無い日々を送っていたせいで、ついにはヒロコの体にまで変化があらわれた。ヒロコは椅子に形を変えてしまったのだ。無機質の椅子、裸になったヒロコ。東京で彼女が失うものはもう何も無い。ただ街を幽霊のように彷徨い転々とする。街のバス停で、路地で彼女を必要としていくひとたちがいた。ある男の人に拾われた椅子の彼女は音楽を聴き、暖かいお風呂に入り、パソコンを覗き、雑誌を切り抜いては鼻歌をうたう。こんなにも自分が役に立つなんて思ったことは無かったと。それは東京という場所でヒロコがたどり着いた生き方。


STORY2 MERDE(糞) 

下水道の怪人Merdeの出現で混乱する東京の人たち。メルドは花を食べます。しかも一文字菊という菊だけ。なんだろうと思って調べたら一文字菊とは花びらが一層だけ(16花弁級)の大ぶりな菊だそう!菊は古来中国から伝わりまず鑑賞用として皇族たちにもてはやされ江戸時代になると一般にも普及して、その完成した美しさを競って栽培が盛んに行われ食用の菊の栽培も全国に広まったらしい。皇室の紋章として使えるのはこの美しい大きな菊だけで、そんなわけで菊は天皇を象徴していて、その天皇は日本の象徴であるから菊はやっぱり私たち日本人のシンボルなんですね。あとはお金も食べていたような…メルド氏あっぱれです。余分ですけど薄紫色が特徴の「もってのほか」なんていう名前の食用菊もあるようです。皇室のお花を食べるなんてもってのほか!というのともってのほかうまい!(さすがは皇室の花、特別おいしい)という意味合いからそう呼ばれているそう。面白いですね。天麩羅にしたりサッとお湯でくぐらせて酢醤油でいただくそうです。私も菊、食べてみたいな。

さてさて、メルドの目撃情報は多々あります。
-テロリストの一味によく似ている、17年前に失踪した記憶喪失の息子ではないかと名乗るシベリアの女性、オウム信者に似ているのがいた、幼児ポルノに出ていた男に酷似等々-
彼の名メルドについてはメルド(merde)、はshit(糞)を意味するフランス語に音が良く似ているらしい。
彼は下水道で旧日本軍の残した手榴弾を偶然発見し地上(渋谷か?)に出て街の人たちを無差別に殺すなど東京で大暴れします。
その罪に問われついに死刑を求刑されてしまいます。そして裁判ではなぜそんなことをしたのかメルドに問いただすところから始まるのです。
メルド(以下㋱)「罪のない人が嫌い、人間が好きじゃない」
裁判員(以下㋚)「人間がきらいなら自分がいなくなった方がいいんじゃないか?」
㋱「生きるのが好きなんじゃ、ぼけなす!」
㋚「なんで日本人をねらった?」
㋱「日本人が一番汚らわしいから」
㋚「じゃぁなんで日本に来たんだ、嫌なら来なきゃいいだろ」
㋱「強制させられてきたんだ、これが自分の背負った十字架だから。日本人の目って女の性器みたで本当に汚らわしい」
㋚「じゃぁあんたは自分のことをきれいな顔してるとでも思ってるのか?」
㋱「美男子かどうかはわからない、でもきっと美男子ではないかな」
㋚「わからないだと、鏡みたことあるのか、ひどい顔だぞ」
㋱「神は鏡を与えなかった、だから自分の顔を見たことがない。でも母親は自分のことをとても美しいと言った。母は聖女だった。母はお前たちに強姦されたんだ。」
㋚「何を言うんだ、ばかなやつめ」
㋱「だから自分はお前たちのこどもなんだ、ああ!死刑は受けたくない、、死刑に反対だ」
しかし裁判から3年後、死刑が執行される。

彼はなぜ東京に現れたのか??裸足で銀座を歩く姿は汚くて、臭くて、まるで妖怪のよう。私も海外に住んで長いので、たまに帰ると東京の街ってきれいだし実は靴なんか履かなくても問題ないって思うことが正直ある、靴汚れないもんね。それに面白いのはメルドが菊を食べるってこと。天皇を象徴する菊には、その使用に暗黙のタブーがかかっている。それをむしゃむしゃと食べる姿はかなり衝撃的に写ったし彼からパンチをくらったような気にさせられた。母親のことを聖女といったり、神や十字架という言葉からも知ることができるど彼がキリシタンである可能性がありますね。エピソードの最後にドル紙幣でアブラハムリンカーンらしき人物像にメルドのチャームポイントである赤ひげが付いて現れます。大統領のアブラハムとのかんけいは不明ですがもしかしたら聖人のアブラハムのことを指し示しているのかも。。聖書の中でアブラハムは神の教えを始めて聞いた人類とされていて、人間では解決できない問題を神に教えを説いてもらって解決しようとした一番弟子なんです。アブラハムと甥のロトは相思相愛の仲だったけど自分らの連れ同士が喧嘩したせいで一緒に行動できなくなってしまってアブラハムはロトに「これからは君が住みたい思うところに生きなさい。私に遠慮はいらないよ。君が左に行くなら、わたしは右に行きます。君が右に行くなら、わたしは左に行きます」と提案したそうです。結果ロトの半生は苦労の塊となってしまったそう。アブラハムは神の言うことには忠実に従ったというし、メルドは現在世界中で3人しか話すことのできない言葉を話す。なんだか特別に選ばれた人たちという所が聖書の中の登場人物と似ているような気がします。そういえば彼と会話できるボランド氏のあご髭は右に、そしてメルドの髭は左に反れていました。
だからこの話には1つのものに2面性があることを暗示しているような所があります。例えば、銀座という高級で華やかで洗練された街並み。でもその銀座のマンホールを開ければ、地下は汚く、暗く、古臭い。同じ銀座の持つ両極端の素顔。そこをマンホールから出てきた男が素足で歩くから、東京の人は震える。くもニュースという報道局がメルドのニュースを伝えている。雲と蜘蛛をかけているのかチャーミングでちょっと笑えますね。同じ言葉を話す者の髭の向きの違い、生き方の違い。何の罪もない赤毛の外国人男性をメルドだと勘違いして暴行した人たち、写メでメルドを撮ってクラスメートに自慢でもしようとしていた女の子も、彼を見て泣いていた女性もちょっと平和すぎではないかな。。
メルドは私たちの息子、愛すべき、息子。その苦しみを背負った顔は傷だらけで十字架を背負っている。そんな彼を顔だけで、身なりだけで、珍しがって笑い者にする家族である私たち。世界はもっと優しくなれないのか、人が隣の人を愛し合う日やみんなが苦しみや問題を一緒になって考えられるようになることが東京にも実際に起きればいいのに。それが日常じゃなきゃいけないし、そこに嘘があってはいけない。生きるのが好きなメルドはそれを東京に言いに来たんだ。


STORY3 SHAKING TOKYO(シェイキング東京)

引きこもりがテーマのこの作品は私の大好きな香川照之さんと蒼井優ちゃんが出ていてうれしかったです。10年間の引きこもりで形成された揺ぎ無い生活パターンが、静けさがある日地震で揺れ動く。いつものように宅配物を受け取り、お金を渡すということだけが外部との唯一の接触だった。便利な世の中、とりわけ便利な東京では引きこもりこそが完璧な場所というふうになってしまった。みんなが外にでなくなってしまった。引きこもりが引きこもりに会う方法は1つ。PIZZA'S ENDの宅配ガールを探して家を飛び出す。地震→揺れる→何かが変わる→新しいことの始まり。今出てこなかったらもう出られなくなる! 東京のもつ行動の巨大連鎖から脱出する勇気ときっかけは偶然からなる動機があってこそかもしれない。 揺れる揺れる、人生を変えていく揺れ。 

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